お客様の喜ぶ顔を思い浮かべて面白いものを仕入れ
平成28年度 第12回おもしろマーケティング大賞
特別賞
長崎小学校の前にある衣料雑貨店。一歩店内に入ると所狭しと並べられた品物に圧倒される。衣料、帽子、履物、バッグ、小物と店いっぱいに陳列されている。開店したのは昭和61年。当時は靴下の専門店だったが、お客の要望に応えていくうちに品数が増えていったそうだ。
しかし品揃えだけで30年以上も続いてきたわけではない。ここはただの物販店ではない。女将のきめ細かいサービスが評判の店だ。そしてさらにお客様に愛され続けるヒミツがあった。
女将と亭主の二人三脚
女将と亭主で役割分担している。女将は仕入と販売、亭主は内装とダイレクトメール作成だ。
女将は問屋に毎週出掛けて行って、独特の目利きで仕入れてくる。得意客の好みを熟知しており、お客様の喜ぶ様子を思い浮かべながら選んでくるそうだ。また、面白いものを発掘してくるセンスもあり、取材当日は珍味の焼きアナゴを見せてくれた。販売では、無料のギフトラッピングが名物で、女将オリジナルの得意技だ。店にはお客用の椅子があり、腰かけて買物やおしゃべりを楽しむことができる。配達サービスはもちろんあり、さらにはだいたいの要望を伝えておくと、適当な商品を見繕って訪問販売してくれることもある。地域の高齢のご婦人方には実にありがたい存在といえよう。
一方で亭主は、家電販売会社に勤めていた経験から、店の内装から電気工事まですべて自らの手で行った。アクリルガラスのショーケースや陳列棚など見事なものだ。そして毎月の企画販売(フェアー)を案内するダイレクトメールが圧巻だ。見ずに捨ててしまわれることのないように、豆知識など読み物を盛り込んだ。これを続けることは大変な作業だ。
このようにして亭主のプロモーションと女将の販売がうまく組み合わさってお客様の評価につながっているというわけだ。
1. | ソリューション | 配達サービス、顧客要望をもとに商品を揃えて訪問販売 |
2. | 地域性 | 得意客は地域の高齢婦人が多く、店内に椅子を用意 |
3. | 消費行動の文脈 | 得意客の好みを熟知した販売、毎月のフェアーの開催 |
「よくできた店」
物販店は物を売ります買いますだけではないということをこの店は教えてくれる。いろいろな付加価値がついたうえで商いは成立するということだ。そしてその源泉は、お客様の喜ぶ姿を思い浮かべるという女将の言葉に象徴される。
さらに衣料雑貨のように毎日の買い物とまでいかない店は、お客様に思い出してもらうこと、そしてまた行きたいと思っていただけることが大切だ。見てもらう工夫が施されたダイレクトメールによって当店を思い出してもらい、きめ細かいサービスでよい印象を持ってもらったことでまた行きたいと思っていただけるのである。実によくできた店だ。
当店のここまでの道のりは決して平たんだったわけではない。苦しい時期は何度もあったそうだ。それを品揃えやサービスを試行錯誤して乗り越えてきたのだ。そういう仮説検証の繰り返しが経営では大切なのである。
エモーション |
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住所 | 東京都豊島区長崎2-3-14 |
業種 | 衣料雑貨店 |
ホームページ | http://emotion-toshima.net/index.html |