東池袋駅前に六甲おろしの風が吹く。
平成30年度 第13回おもしろマーケティング大賞
優秀賞
東京メトロ有楽町線の東池袋駅を地上に出ると、首都高の高架下に商店街があり、その1号棟1番にサン浜名という店がある。看板には喫茶・中華、うなぎ・和食とあるが、喫茶・中華は2階の店、うなぎ・和食は1階の店で、いずれもサン浜名というが別々の店だ。
さて、2階に上がってみよう。扉を開けるとまず目に入るのはカウンターを囲むように飾られた阪神タイガースグッズの数々だ。
奥のテーブル席への通路にある本棚には大量の漫画単行本、それも往年の。冷蔵ケースには瓶コーラ。なんか懐かしい。
プロ野球シーズン中は、もちろんテレビの野球中継を流している。タイガースの応援で盛り上がることもしばしばだ。
1.
娯楽性
阪神タイガースグッズや大量の漫画本でにぎやかなレトロな店
2.
限定性
「サン浜名」ラベルの焼酎、店主の気まぐれ料理
3.
口コミ
地域の事業所や住民に40年以上にわたって支持
皆さまに育てていただいた店
この店ができたのは昭和53年。その前、ここは太洋軒という店で、店主の家族が経営していた。そのころ、店主は29歳で通信関係の勤め人だったが、ちょっとしたきっかけから勢いでこの店を継ぐことになった。まったくの畑違い、ゼロからのスタートとなったわけだから、勝手がわからない。しかしまずいと酷評されながらも、なぜかお客様に可愛がられた。
メニューはお客様の反応を見ながら試作、改良し、増やしていった。お客様の感想を素直に受け入れる。中華とうたっているが、中華にこだわらない。ハンバーグ、おでん、煮込みなど、お客様に喜んでいただければ増えていく。現在のメニュー表は大賑わいとなっている。さらに常連にはメニュー表にないきまぐれ料理もでてくる。常連は何も言わずに座るだけよい。
飾られたタイガースグッズは、ほとんどがお客様からのプレゼントだ。店主がタイガースファンと知って、持ってきてくれるのだ。漫画本もそうだ。続き物で、お客様が端本を持ち込んだなら、店主が残りを補充したりして充実していった。
また、開店当時から夜遅くまで営業しており、近くの事業所から夜食の出前で重宝された。その中で今では師匠と呼んでいる大恩人に出会い、商売のしかたや人の使い方などを教えてもらい、その関係は今でも続いている。また、従業員にも恵まれた。親子二代にわたって当店でアルバイトしたケースもある。
こだわりを捨ててお客様の喜ぶものを出せ
このように、当店は皆さまに育てていただいた、ということになるが、その源泉は店主の人柄によるところが大きいのではないだろうか。ゼロからのスタートとはいえ、こだわりをもたず、お客様や協力者の意見に素直に耳を傾けた。それが40年以上も続いている秘訣のように思う。そうでなければ親子二代でアルバイトしないだろう。
店主は言う。「お客さんの喜ぶものを出しゃいいんだ。中華料理屋だからと言って中華にこだわってちゃよくない。商売がうまくいかない人は余計なこだわりを捨てろ。あきらめるな。なんでもやってみろ。」
ちなみに当店ができた昭和53年は阪神タイガースが初めて最下位に沈んだ年だった。そして今回受賞した平成30年も阪神タイガースは17年ぶりの最下位になってしまった。(いらんこと言わんでええねん)
店舗情報
サン浜名 |
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住所 | 東京都豊島区南池袋2-43-16 2F |
業種 | 中華料理店 |