平成24年新年懇親会会長挨拶

平成24年新年懇親会会長挨拶
平成24年2月2日
豊島区中小企業診断士会
会長 西川洋一

ご来賓各位にはお忙しい中、ご出席を賜り、誠にありがとうございました。
新春に当たり、当会を代表して、一言ご挨拶申し上げます。


外部環境
さて、米国ではQE2とその後の金融緩和政策の効果もあって、欧州の金融危機にもかかわらず、経済は回復傾向にあります。一方、我が国は、変動相場制の下での常識(マネタリーアプローチ(注1))に反する2度の為替介入や、日銀の包括的金融緩和にもかかわらず、相も変わらず円高・デフレ(注2)が続いております。

また、野田首相のもとで、(財務省悲願の)消費税増税に向けた議論が進められていますが、名目GDPを増やさずに財政再建をした国はないといわれており、いまのまま消費税を増税しても、税収効果は限られ(名目GDPが1%成長すると国税では1.1%、地方税では1.05%の伸び(弾性値)が期待できるとされている。デフレ下では名目GDPが伸びず、当然税収も増えない)、財政再建もおぼつかず、「日本再生元年」どころか、「日本沈没元年」のおそれすらあります。

平成21年度の国の財務書類(一般・特別会計)によれば、負債総額は1019兆円、資産合計は647兆円で、純債務額は372兆円となっています。さらに日銀の国債保有残高が80兆円程度なので、実質の純債務額は300兆円程です。

純債務でみれば、マスコミや財務省がいうほど国の財務状況は深刻ではないものの、平成19年度までは縮小傾向にあった名目GDPに対するプライマリーバランス(PB)の比は、平成20年度以降は拡大傾向にあります。

円高・デフレを解消し、名目GDP対PB比を改善するには、日銀の更なる量的緩和が必要と言われています。H23.1月とH24.1月の日銀のバランスシートを比較すると、マネタリーベース(発行銀行券と当座預金の合計)は13兆円ほどしか増えていません(それぞれ98兆円、111兆円)。これでは、量的緩和競争に負けるわけです(注3)。

政府には、金融政策の重要性を十分に認識した政策運営を期待したいものです。
 
(さて)こうした外部環境の中で
平成23年度においては、
1.当会が母体のNPO法人としま創業ネットワークでは、
1)  生活産業課様からの業務委託による創業者支援講座、共催による「ビジネスなんでも相談」、
2)  区民部自治協働推進担当課様からの業務委託により、ソーシャルビジネス、コミュニティビジネス支援を目的とする「区民活動センター相談業務」を実施させて頂きました。

2.企業経営の支援分野では、
1)  生活産業課様からの業務委託による「個店診断・希望者診断」を44件ほど実施、税理士会様・社労士会様と共に九士業会による「暮らしの無料相談会」を実施。
本年3月1日から開催される第5回「豊島ものづくりメッセ」開催に、(社)豊島産業協会様とともに積極的に協力予定。

2)  東商豊島支部様主催の「経営力向上TOKYOプロジェクト」に当会所属の診断士が協力させて頂きました。

3.商店街・街づくり支援の分野では、
1)  中小企業診断協会東京支部の商店街支援事業の一環として、鬼子母神通り商店睦会、椎名町すずらん通り商店街、南池袋サンロード商店街に対し支援申し上げた。
また、城西支会の地域活性化支援事業(旧4区コンペ)において、当会の松田武先生が「もっと素敵な商人祭を目指して」という提案を行い、残念ながら4連覇はならなかったが、優秀賞(2等)を受賞しました。

2)  文化商工部観光課様とともに「トキワ荘」関連支援を行い、第7回東京商店街グランプリにおいて優秀賞(3等賞)を受賞。

3)  昨年七・八月に「第7回地域・おもしろM大賞」選定事業を実施し、本年一月十一日の区商連様の新年会で、足立会長様と共に表彰状を授与させて頂きました。 

4)  昨年八月「大塚阿波踊り」で、診断士十三名、弁護士四名の計十七名のメンバーが木崎連長率いる区商連様の連にて、区役所連の東澤部長には負けるものの華麗な踊りを披露させて頂きました。

5)  本年に入り、池袋本町商店街様に対し「商店街宅配事業」関連のお手伝い(先進事例の調査、アンケート、ボランティア教育)をさせて頂いております。

平成24年度について
1.
最近の社会的ニーズ(健康、高齢化、環境、地域の疲弊、貧困(BOP)等々)への関心の高まりを背景に、経営学者のM・E・ポータは「共通価値」(shared value)(注4)という考え方を提唱しています。

これは、市場における経済的ニーズと社会的ニーズを前提に、社会的ニーズに対応する社会的価値を創造することでもって、経済的価値を創造するというアプローチです。従来の慈善活動としてのCSR(企業の社会的責任)とは一線を画します。

マイクロファイナンス、GE、ネスレ、ユニリーバ等々の先進取り組みやソーシャルビジネスがその例ですが、区商連様はじめ各商店街様の活動も社会的ニーズに対応した取り組みであり、これによって同時に経済的価値も生み出すことができれば、まさにこの「共通価値」の創造になります。

また、当会が受託している経営診断において、受診先の社会的ニーズへの対応を評価するようにすれば、行政が行う公的診断としてより時代にフィットしたもの、公共の利益に合致したものになると考えられます。

2.という訳で、当会は、この「共通価値」の概念も取り込みながら、従来にも増して商店街・街づくりの支援及び企業経営支援に積極的にご協力申し上げたいと考えております。具体的には、「地域・おもしろM大賞」選定事業、「トキワ荘」関連のイベント、商店街に対するハンズインハンズの支援、経営診断などにより、社会的ニーズと経済的ニーズの両方に対応できる支援・協力ができれば幸いと考えております。

最後に、
ご来賓各位、会員各位のご健勝と事業繁栄を祈念申し上げて、私の挨拶とさせて頂きます。

(注1) 嘉悦大学高橋洋一教授によれば、円ドル為替レートは、中長期的に日米のマネタリーベースの比率で決まり(マネタ リーアプローチ)、マネタリーベースは現金通貨(日銀券と硬貨)+日銀当座預金残高なので、日銀はお札をもっと刷って国債等の資産を買い入れ、バランスシートを膨らませれば、円ドル相場は円安に傾く、とのことである。エール大学浜田宏一教授は、25兆円は欲しいと言っている。 なお、円高解消に向けて通貨供給量を増やせば、デフレ(ものの量に対して通貨供給量が不足している状態)も解消に向かう。このため、円高とデフレは表裏一体の関係と言われている。

(注2) 「米国の物価上昇率は長年2%程度で、世界の大部分の中央銀行も(政策目標として)2%を採用している。非常に問題が大きいデフレーションを避けるという至極もっともな理由も(2%のインフレ率目標の背景に)ある。」2012.1.25バーナンキ議長の記者会見。ちなみに日銀のインフレ率目標は1%である。日銀は、ゼロ金利や名目GDP比の中央銀行の総資産残高などの面で「金融緩和の先駆者」であったが、「デフレ放置の先駆者」でもあった、といわれている。

(注3) QE2は6000億ドル(2010.11~2011.6)、ECBの流動性供給オペは4890億ユーロ(2011.12)、日銀の包括的金融緩和の国債・社債・ETF・REITの資産買入枠は5兆円(2010.11~)。

(注4)  「ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー」2011/6月号参
照。その中で、企業が社会的ニーズに対応するためには、「1)製品と市場を見直す  2)バリューチェーンの生産性を再定義する  3)企業が拠点を置く地域を支援する産業クラスターをつくる」という三つの方法がある、と述べている。

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